おすすめしたいもの/会ってほしいひと/体験してほしいこと2023.09.12
長崎の玄関口として地域の人と一心同体で盛り上げていく!|安田産業汽船 安田舟平さん
公共の交通機関は、地域活性化に欠かせないピース。大村湾を中心に海上交通事業を行い、時津町と大村市においてマリンターミナルを兼ねたビジネスホテルを運営する、安田産業汽船もそのような重要な役割を担っています。今回は代表取締役を務める安田舟平さんにインタビューを行い、事業継承したきっかけや今後のビジョンなどを語っていただきました。
東京に就職して、長崎への想いが強くなった
安田産業汽船は1953年に創業し、長崎の海上交通と宿泊機能を支えてきた会社です。現在、大村湾内航路としては、時津〜長崎空港と長崎空港〜ハウステンボスの定期便と、競艇ファンサービス便(大村競艇開催日のみ)を運航しています。また、マリンターミナルを兼ねた時津ヤスダオーシャンホテルと大村ヤスダオーシャンホテルの経営も行っています。
今回、時津ヤスダオーシャンホテルの1階レストランにて、現在の代表取締役である安田舟平さんにインタビューをさせていただきました。
大村市で生まれた安田舟平さんは、もともとは先代の事業を継承することを考えていなかったそうです。
「たまたま生まれ育ったのが長崎県大村市という感じで、学生時代は正直そこまで地域に対しての思い入れはなかったんです。事業を継ぐという考えもなく、大学卒業後は上京しました。」
故郷の長崎への想いが強くなったのは、東京で就職してからだと言います。
「東京で働くうちに、長崎のことを思い出し、地元が好きなんだなと認識するようになりました。東京にいながら、大村の歴史を勉強したり、先代が続けてきた会社の取り組みも気にかけていました」
そんな安田さんが事業継承するきっかけとなったのは、父親からの一本の電話でした。
「急に父から事業継承する人がいないと電話がかかってきました。その時は全く畑違いの消防隊員として働いて、体力勝負の世界なので、経営のけの字も知らないわけです。自分にはやれるわけがないと思っていました」
しかし、そんな安田さんを奮い立たせたのは、やはり地元・長崎への想いだったと言います。
「長崎の良さを東京にいながら認識していました。いろいろ悩みましたが、何か地元に貢献できないかと考えていたので、思い切って帰ることを決意しました」
「みんなの頑張り応援隊」として地域を盛りあげる
そうして安田さんが事業を引き継ぐようになったのは、2022年3月下旬のこと。一年余りが経ち、現在の心境を聞いてみました。
「経営環境は厳しく、私もまだ駆け出しですが、新しい公共交通の在り方や宿泊事業の展開を模索しながら、この事業を未来に残していきたいと強く思います。毎日が真剣勝負です!」
物腰柔らかな雰囲気でありつつ、強い眼差しで語る安田さん。事業継承していく中で、具体的にはこれまでどのようなことをしてきたのでしょうか?
「地域の公共交通はサービス水準をいかに保つかが重要だと思っています。今、船員も成り手が不足していて、このままでは現行のダイヤを維持することが難しくなります。そこで自ら小型旅客船の特定講習を修了し、時には船長の補佐をしながら実際に船の操作の訓練をすることもあります」
経営者としてだけではなく、自ら現場に出て学んでいるという安田さん。そんな中、新しく収益をあげていくためには、やはり地域の人との連携が欠かせないと言います。
「仕事をする以上は対価を得て、自分たちの生活を守ることがまず大事ですが、その先の部分もやはり重要なんです。交通、宿泊はともにその地域に及ぼす影響が大きいと感じています」
遠方からの宿泊者は、夜に居酒屋で会食や打ち上げを行うなど、近隣の飲食店にも経済効果は波及しています。経済はつながっていて、地域とともに盛りあげていくことが重要だと、安田さんは考えているようです。
「たとえば運賃を安くするキャンペーンをしたところで、意外と乗客の数は変わらないんですね。それより目的地で何があるかが大事なんです。福山雅治さんのコンサートがあると、乗客が増えるといったような…」
目的地で需要が発生しないと、なかなか利用客が増えないという状況があるからこそ、逆に言えば、その土地がいかに魅力的になるかが重要だと言います。
「だからこそ地域の人たちと一緒に盛り上げていけるかが鍵となってきます。時津や大村が魅力的な街になることで、私たちの実績もあがっていけるんです。だからまずは周辺のみなさんが儲かってもらうことが大事だと思っています」
そんな安田さんは自分たちのことをこう称します、「みんなの頑張り応援隊」と。そういう安田さんの目は輝いています。そこには決して他力本願というスタンスではなく、安田さんも積極的に地域貢献していこうという強い想いがあるのです。
地域のための新たなチャレンジを続ける
安田さんは海上交通や宿泊施設という自社のサービスを、いかに他社のサービスと連携して、新しい事業ができないかを常に考えている人物でした。アイディアや構想をどんどん生み出し、行政や地元企業と話し合いを重ねています。
たとえば、インタビューを行った時津ヤスダオーシャンホテルの1階レストランは、窓から船乗り場を含めた時津港を望めます。そんな景観を見ながら気分良く朝食をとれたという声があがっており、そんな強みを何かに活かせるかもしれません。
実際にインタビューを行った日も、地域を盛りあげるための構想についての話し合いがその後に計画されていたようで、内容を少しだけ聞かせてもらいました。実現すれば、多くの人の関心を寄せられそうなおもしろい取り組みで、聞いているだけでこちらもワクワクしてきました。
インタビューが一通り終わった後、安田さんは最近あった出来事として、長与町にて開催された「リトルペーロン」の催しについて楽しそうに話してくれました。これは長崎県の伝統行事である「ペーロン」を継承するために行われたイベントで、県内外20チームが参加したそうです。イベントは大好評で、他のチームからも「次は来たい」という声が出ているとのことでした。
「そんな新しい需要を生み出す方々を、全力で応援していきたいですね。一緒に地域を盛り上げていきたいです。逆に地域の元気がなくなると、私たちの需要も失われるし、本当に一心同体だと思っています。地域の取り組みを強くしていきたいです」
実は地元に興味を持つきっかけの一つになったのも、以前に参加した時津町のペーロン大会だったという安田さん。そこでこてこての長崎弁を話すおばちゃん達が選手を鼓舞している姿を見て、感動したそうです。
時を経て、今は安田さん自らが地域を盛りあげる人々の応援隊として、日夜走り回っています。人と人との出会いの中で、いろいろなチャンスを生み出そうとしている、安田さんの今後の活動にぜひ注目してみてください。