食べてほしいもの2026.06.20
”守りたい”と”学びたい”がつなぐ、雲仙あか牛の未来|髙田牧場 髙田 紳次さん、加藤舜貴さん

長崎県南島原市・有家町。
有明海から吹く風と豊かな自然に囲まれたこの場所で、長崎県内唯一の“雲仙あか牛”肥育農家として歩み続ける「髙田牧場」。
祖父の代から続く牧場を「守りたい」と願う代表・髙田紳次さんと、“あか牛の本場”熊本・阿蘇から「学びたい」と飛び込んできた若き牧場長・加藤舜貴さん。
世代も立場も異なる二人が育てているのは、牛だけではありません。
そこには、命への感謝、人とのつながり、そして“雲仙あか牛”の未来へつなぐ想いがありました。
祖父から受け継いだ牧場を守りたい
髙田牧場の始まりは、昭和44年。
髙田さんのお祖父様の代から続く牧場です。
もともと南島原地域には、あか牛を肥育する農家が多くありました。しかし時代とともに減少し、現在では髙田牧場が長崎県内唯一のあか牛肥育農家となっています。
髙田さんご自身は、牧場の仕事を始めて27年。
お祖父様が高齢になり、跡継ぎが必要になったとき、「この牧場を途絶えさせたくない」という想いから後を継がれたそうです。

お話をお伺いしたときには多くを語ることはありませんでしたが、その背景には、お祖父様のお怪我もあったとのこと。
代々続く牧場を守りたいという強い想いが、今の髙田牧場につながっているようです。
阿蘇からやって来た若き牧場長
牧場長を務める加藤さんは、熊本県阿蘇市のご出身。
“あか牛の本場”ともいえる阿蘇で育ち、実家でも牛を飼育していたことから、幼い頃から牛に親しんできたそうです。

高校在学時に知り合いの畜産農家さんと一緒に市場へ同行していたときに
社長を紹介され、 「あか牛の生産を学びたい」と話したことがきっかけで髙田牧場へ。
現在は牧場長として、牛たちの管理を任されています。
「勉強のつもりで来たのに、“牧場長”という役割を与えられてしまって(笑)。すっかり髙田社長の作戦にはまってしまいました」
そう笑いながら話す加藤さんの姿からは、牧場の温かな雰囲気が伝わってきました。
約1,200頭を育てる大規模牧場
髙田牧場では、約1,200頭の牛を飼育しています。
その大半は黒毛和牛ですが、牧場の原点でもある「あか牛」の生産も大切に続けています。

牛は産まれてから約30カ月で出荷され、黒牛は約1トン、あか牛は約750kgほどまで成長します。
あか牛は黒毛和牛に比べて少し小柄で、人懐っこい性格も特徴。
カメラを向けると興味津々で近づいてくる姿がとても印象的でした。
餌にも環境にも妥協しない
髙田牧場では、自社の飼料配合工場を備え、牛の大きさや月齢に合わせて5種類ほどの餌を配合しています。

特にこだわっているのが“国産原料”。
現在も一部に国産原料を使用していますが、「将来的には100%国産原料の餌を実現したい」と語ります。
国産原料を使用すること自体が珍しいなか、そこには「純国産の牛を育てたい」という強い想いが込められていました。
また、牧場が位置する南島原の環境も、牛の飼育に適しているそうです。
有明海から吹く風が山の斜面に建つ牛舎を抜け、牧場内は非常に風通しの良い環境。
夏場の暑さ対策として、牛舎には細かく扇風機を配置し、牛たちが快適に過ごせる工夫もされています。
取材当日、牧場から見えた有明海の景色と心地よい風がとても印象的でした。
「おいしかった」が何より嬉しい
「食べた人から“おいしかった”と言ってもらえることが、一番嬉しいですね」
そう話す髙田さん。

雲仙あか牛は、黒毛和牛のような脂の甘みとは異なり、赤身本来の旨みをしっかり味わえるのが特徴です。
その味わいは料理人からも高く評価され、レストランで取り扱われることも。
実際に、シェフが生産地視察に訪れることもあるそうです。
人にも、牛にも、あたたかい牧場
加藤さんのお話から印象的だったのは、髙田牧場の“人の温かさ”。
髙田社長は真面目でありながらとてもフランクなお人柄で、スタッフ同士が年齢関係なく意見を言い合える雰囲気があるそうです。

みんなでBBQをしたり、レクリエーションを企画したり。
取材当日も、インターン生の歓迎会を兼ねたBBQが予定されており、私たち取材陣にまで「ぜひ来てください」と声をかけてくださいました。
牛への愛情だけでなく、一緒に働く人たちへの思いやりも感じられる牧場でした。
命への感謝を忘れない
牧場の敷地内には、「馬頭観音様」を祀る神社があります。
家畜を育て、人の食へとつなぐ仕事だからこそ、命への感謝を大切にしたい。
そんな想いから建立されたそうです。

毎年年始には、近隣農家の方々も集まり、この場所で祈祷が行われています。
南島原の自然とともに
「有家は、海も山もあって自然豊かなところですね」
そう語る髙田さん。
おすすめスポットとして教えてくださったのは、鮎返りの滝。
また、雲仙あか牛を味わえるお店として、九州馬刺し 四季亭も紹介してくださいました。
“あか牛”を未来へつなぐために
取材時には、新しい牛舎の建設も進められていました。
また、農業高校からインターン生を受け入れるなど、次世代育成にも積極的に取り組まれています。
将来について具体的には多くを語られなかった髙田さんですが、「あか牛の生産は大切に続けていきたい」という言葉が、とても印象に残りました。
最後に、読者へのメッセージをお願いすると――
「ぜひ、あか牛を食べてみてください」
その一言には、長年牛と向き合ってきた誇りと、未来へつなぐ想いが込められていました。

髙田牧場
髙田 紳次さん、加藤舜貴さん
住所:長崎県南島原市有家町3890
TEL:0957-82-5502
HP:https://takadabokujyou.jp/
オンラインショップ:https://tsukushi-foodshop.com/






