おすすめしたいもの/会ってほしいひと/暮らしたくなること/行ってほしいところ2025.10.17
地域の魅力とともに届ける不動産情報 『オヘソジャーナル』の挑戦|オヘソジャーナル運営 浅田勝也さん

長崎県波佐見町。陶磁器の里として知られるこの町で、不動産の新しいかたちに挑戦している人がいます。『オヘソジャーナル』代表・浅田勝也さん。
今回は、地域の特性を生かした情報発信の工夫や、不動産を通じて地域の未来を支えたいという思いについて、お話を伺いました。
町の小さな不動産部門から始まった挑戦

波佐見町で生まれ育った浅田勝也さんは、福岡の専門学校を卒業後、27歳で結婚し、妻・ナルミさんの父が経営する浅田建設の不動産部に入社します。
当初は建設会社の一部門として不動産仲介を手がけていましたが、2017年にはその活動の一環として『オヘソジャーナル』を立ち上げました。その後、3年前に不動産部門を独立し法人化し、現在に至ります。
「最初はアットホームやスーモといった大手不動産サイトに物件を掲載していました。でも、どうしても写真数が限られていたり、地域の雰囲気が伝わらなかったりする。現地に来た人から“思っていたのと違う”と言われることも多くて、これはなんとかしたいと考えたのが始まりです」
こうして、不動産情報を「ただの物件データ」から「暮らしを想像できる物語」へと変える挑戦が始まりました。
“おへそ”という名前に込めた意味

『オヘソジャーナル』という名前には、地域の歴史と立地への思いが込められています。
波佐見町は旧肥前国のほぼ中心に位置し、交通や文化の要所として栄えてきました。その「へそ」にあたる場所から情報を発信する、という意味を込めたのです。
「波佐見町だけだとピンとこない人もいる。でも“旧肥前のおへそ”だと言うと、歴史的にも納得感があるんです。」
現在は波佐見町を中心に、東彼杵町や有田町など車で30分圏内の地域を重点エリアとしています。依頼があれば佐世保や平戸の案件も受けていますが、あくまで「地元密着」を基本姿勢にしています。
写真では伝わらない“空気”を、動画と取材で
『オヘソジャーナル』の特徴は、物件の間取りや外観写真だけではなく、地域の風景や人々の暮らしまでを伝える情報発信にあります。
「写真だけでは“広さ感”や“暮らしの気配”はなかなか伝わらないんです。だから動画を取り入れました。自分でドローンを飛ばして撮影もしますし、動画編集もしています」
YouTubeチャンネルでは、物件紹介だけでなく、地元のカフェや商店、農家の暮らしまで紹介。移住希望者にとっては、不動産そのもの以上に「この町で暮らすイメージ」を持てるコンテンツとなっています。
地域の暮らしを伝えるもう一つの使命

浅田さんは、ただ不動産を売ることだけが目的ではないと強調します。
「地域の歴史や人々の営みを発信することで、 移住者の方々が安心して移住できるきっかけになる。例えば、 その地域にどんな施設や商店があるのか、 どんな人々が住んでいるのか、 といった情報を伝えることは、 移住者の方々にとっても、 安心材料になりますよね。」
そのため、『オヘソジャーナル』では物件情報と並行して、地域のお店や施設、文化活動なども積極的に取材。グラフィックデザインの経験を活かし、見やすく美しい誌面を意識して情報をまとめています。
共感から始まったスタッフとの出会い
現在、『オヘソジャーナル』には浅田夫妻のほかに、不動産アドバイザーの池田さんが加わっています。
『オヘソジャーナル』の取り組みに惹かれ、自ら連絡をして働くことになった池田さん。これまで総合職として全国を転々とし、様々な職場を経験してきた彼女にとって、今回の決断は自然な流れでもあり、少し冒険でもあったと言います。

「これまで総合職でいろいろな会社を渡り歩いてきました。その間、物件情報を見るのが好きで、R不動産や物件ファンといったサイトをよくチェックしていたんです。ある時、海の見える高台の家を探していたところ、偶然『オヘソジャーナル』を見つけて…気づいたら電話していました。」
生まれは佐世保。広島や関東など、転勤を通じて様々な土地で仕事を経験してきましたが、「そろそろ地元に戻ろう」と考えたタイミングで、偶然の出会いがあったと語ります。求人も出ていない状態でしたが、「自分が好きそうなところで、ワクワクできる仕事がしたい」と直感で決断。
未経験でも“楽しさ”が勝つ仕事
池田さんにとって、不動産業は未経験の世界でした。
「正直、不動産がやりたくて転職したわけではないんです。ただ、ホームページを見た瞬間に“楽しそう!”と思って。どんな仕組みで、どうやって物件を紹介しているのか知りたい気持ちが強かったんです。記事を書くことにも興味がありましたし。」
仕事を始めると、専門的な知識やお客さんとのやり取りなど、大変なこともあると感じたそうです。しかし、それ以上に「やりたい」という気持ちが勝り、日々の業務の中で楽しさを実感しているといいます。
「不動産の仕事は覚えることが多くて大変な部分もあるんですけど、入ったばかりの私でも、まず“試してみたい”“関わってみたい”という導入の気持ちからスタートできました。だから、大変なことがあっても楽しさの方が勝つんです。ここは本当にいい会社だなと感じています。」
池田さんのように“共感から仲間になる”人が集まることも、『オヘソジャーナル』の大きな魅力です。
不動産業界への新しい風
浅田さんは今後の展望についてこう語ります。
「時間も手間もかかるけれど、物件の魅力を丁寧に伝えることは絶対に必要。お客さんの安心感が増すし、地域にとってもプラスになる。不動産を通じて、地域の未来を支える役割を果たしたい」

『オヘソジャーナル』の挑戦は、単に空き家や土地を紹介するものではなく、“暮らしそのものを編集して発信する”活動です。そこには、地域の空気を丸ごと届けることで、新しい住民や事業者を迎え入れ、地域を元気にしたいという願いが込められています。
取材を通じて感じたのは、浅田さんの言葉にある「不安を減らし、期待を育てる」という視点です。
『オヘソジャーナル』の記事や動画は、不動産情報を探す人にとって単なる参考資料ではなく、“ここで暮らす未来”を想像するための地図のような存在。
これから移住や開業を考える人にとって、『オヘソジャーナル』が描く物語はきっと、最初の一歩を後押ししてくれるはずです。

オヘソジャーナル
代表:浅田勝也
運営会社:株式会社 あるある不動産
所在地:長崎県東彼杵郡波佐見町折敷瀬郷1079-3
HP:https://ohesojournal.com/
Facebook:https://www.facebook.com/Ohesojournal/
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YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCMpRZPzoV8K2sYQv4cCiUew