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おすすめしたいもの/行ってほしいところ/食べてほしいもの2025.08.24

20年の想いがつないだ『長崎香茶』の物語|株式会社サンダイ 吉野 豊さん

長崎の豊かな自然に育まれた、一杯のお茶があります。その名は「長崎香茶」。

でも、これはただのお茶ではありません。お茶の葉に、長崎の名産「びわ」の葉を合わせ、独自の発酵技術でじっくりと仕上げた、ここだけの特別なブレンドティーです。

この一杯が私たちのもとに届くまでには、なんと20年以上の歳月がありました。県と大学の研究室から始まり、大手企業の撤退という危機を乗り越え、農家さんたちの熱い想いと、一つの企業との出会いによって形になった物語です。

はじまりは、県と大学の研究室から

物語が動き出したのは2002年。
長崎県と地元大学が、「お茶」「びわ」「みかん」といった長崎ならではの素材を組み合わせ、新しい特産品を生み出そうと研究を始めました。

美味しさをどう引き出すか、どんな健康効果があるのか──臨床試験や成分分析を重ね、2008年頃まで試行錯誤が続きました。その挑戦は大手飲料メーカーの目にもとまり、共同で商品開発を進める話もあったそうです。

けれど、夢は簡単には形になりません。

商品化目前でメーカーが撤退し、信じて歩んできた農家さんたちは、暗闇の中に取り残されてしまいました。

「自分たちの手で」農家さんたちの決意が、未来へ繋いだ灯火

希望の灯が今にも消えそうになったとき、それでも長崎の農家さんたちは諦めませんでした。
「自分たちの手で、この研究の想いを未来へつなごう」――そんな強い決意のもと、30軒以上のお茶農家さんが集まり、生産組合を立ち上げます。

「有限責任事業組合」という少し特別な形での再出発。
農家さん一人ひとりが主役となり、この特別なお茶づくりに挑む、前例のないチャレンジでした。

やがてこの組合は「株式会社長崎ワンダーリーフ」となり、新たな一歩を踏み出します。

一度は消えかけたプロジェクトの火種は、作り手たちの強い意志によって、しっかりと守られたのです。

異業種からの挑戦。運命の出会いが、物語を大きく動かした

農家さんたちの奮闘が続く中、物語に新たな光をもたらしたのが、吉野 豊さん率いる株式会社サンダイでした。

意外にも、この会社はもともとお茶とは無縁。

「父が1982年に創業した会社で、最初は養殖魚のエサを販売していました」と吉野さんは話します。

時代とともに新しい事業を探しながらも、なかなか「これだ」という出会いがない日々。
そんなとき、「長崎の美味しい食を届けたい」という想いから特産品事業を始め、2013年の暮れに長崎ワンダーリーフの「びわの葉入り発酵茶」の原料と出会いました。

「この素材の可能性を形にしたい」と2014年に協業をスタート。最初の数年は苦戦が続きましたが、諦めず挑戦を重ね、ついに大手健康食品メーカーへの採用が決まり、物語は動き出しました。

吉野さんの会社は、生産者の想いを届ける「橋渡し役」として、このお茶に欠かせない存在となったのです。

「美味しい」と「体に良い」を両立させたい。試行錯誤の先に見つけた、黄金バランス

このお茶が特別なのは、その背景だけではありません。味と体に嬉しい成分、その両方にまっすぐこだわったからこそ、このお茶は唯一無二の存在になりました。

プロジェクトの初期から大学と連携し、科学的な裏付けを重ねてきました。実際に人に飲んでもらい、食後の血糖値の変化や体脂肪や中性脂肪の減少を調べる試験まで実施。地域の産品でここまで健康効果を科学的に示そうとする商品は、本当に珍しいと言えるでしょう。

しかし、生産者の代表として大場和義さんからお話を伺うと、その両立には多くの壁があったといいます。「この配合は機能が良いけど味が…」「同じ条件で作ったはずが味が違う」──研究室の小さな機械ではうまくいっても、工場の大きな設備で同じ味を再現するのは簡単ではありませんでした。


そして試行錯誤の末、独自の「混合発酵製法」を開発。長い挑戦が実り、味と機能性のちょうど良い黄金バランスを実現し、いつでも美味しいお茶を届けられるようになりました。

想いを、どう伝えるか。20年の物語を込めたパッケージデザイン

中身には、絶対の自信がありました。けれど、その価値をどうすれば届けたい人に伝えられるのか――特に地元・長崎での認知度はまだまだ低いのが現実でした。

「自分たちの手で、直接届けられる商品をつくろう」。そんな想いが、一つのブランドづくりへとつながっていきます。

最初に考えたのは、手軽に飲めるペットボトル。でも世の中にはたくさんのペットボトル茶があり、すぐに埋もれてしまうかもしれない。旅先のホテルやお土産屋さんで「一杯いかがですか?」と、その場で味わってもらえる。まずは、この美味しさを知ってほしい――そう考えたのです。

次にこだわったのが、商品の“顔”となるパッケージデザインでした。棚にずらりと並ぶ商品の中で、まず手に取ってもらわなければ、20年の物語も味への想いも届きません。

「紅茶に近い味わいだから、その雰囲気を大切にしつつ、長崎の空気を感じてもらえるデザインにしたかったんです」

デザインチームと何度も話し合い、最終的に選ばれたのは、山あいの茶畑を思わせる温かみのあるデザイン。白い背景に、湯気のようにやわらかなイラストと長崎の風景をそっと描きました。よくあるお茶のパッケージとは少し違う、このお茶だけの世界観を表現したのです。

そこには、「20年以上の物語や作り手たちの想いを、言葉ではなく心で感じてほしい」という願いが込められています。

この一杯から、また新しい物語がはじまる

こうして生まれた「長崎香茶」は、いま長崎空港や駅のお土産物屋さん、観光地のホテルなどで旅人との出会いを待っています。

でも、作り手たちの挑戦は、まだ始まったばかり。次の目標は、もっと地元・長崎の人たちに知ってもらうことです。

「まずは県民の方に飲んでほしいですね。味や体に嬉しい力には、自信がありますから」

このお茶には、行政や大学、農家さんたちの夢が詰まっています。吉野さんも家業を継ぐ葛藤を越え、このお茶づくりに人生をかけると決めた一人。昔からお茶に縁があった家系でもあり、その巡り合わせに特別な使命を感じているのかもしれません。

「関わるみんながハッピーにならないと意味がないんです」

作り手や届ける人など、たくさんの想いを乗せて「長崎香茶」の物語はこれからも続きます。

長崎を訪れるときは、ぜひこの特別な一杯を味わってみてください。きっと、長崎の自然と人の温もりを感じられるはずです。

株式会社サンダイ
所在地:長崎県大村市須田ノ木町858-6
長崎香茶HP: https://nagasaki-kocha.com/

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