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おすすめしたいもの/行ってほしいところ/食べてほしいもの2023.06.06

温もりとこだわりのレモネード|ボーダレスラウンジ代表 江口雅志さん

佐世保市出身の江口さんは、東京や京都、福岡で飲食業や政治家の秘書などの様々な仕事をされた後に長崎へ帰郷。「海の見える倉庫を改造してカフェを開きたい」という長年の夢を叶えるのにぴったりの場所を長与町で見つけ、2018年に開業しました。

「生産者の顔の分かる商品を販売したい」という思いから開発したのは、長与町の温暖な気候を生かして栽培されるレモンを使ったレモネード。「ながさきクラフトレモネード」と名付けられたこの商品はSNSでも人気を呼び、今では長与町の特産品になっています。

でもなぜレモンを使おうと思ったのでしょうか? また今後はどんなことを目指しているのでしょうか? 経営されるカフェ「ボーダレスラウンジ」にお邪魔して、お話を伺いました。

生産者と直接つながりたい

コバルトブルーのレモネードが、夏空に「映える」と評判に。

カフェを開店した江口さんが次に取り組んだのは、看板となる商品の開発でした。カフェだからと言ってコーヒーを追求するだけでは先駆者に太刀打ちできない、そう考えて目をつけたのは地元の農家。

「南米に行ってコーヒーの生産者と直接つながるのも、長崎で農産物の生産者と直接つながるのも、移動距離が違うだけでやってることは同じだなと思って。」

この発想の転換の原点には、福岡のカフェに勤務していた際に「カフェの本場」を見てみたいと単身フランスを訪問した経験があったそうです。

「フランスでカフェやワインのシャトーを見に行ったんですけど、向こうの人は反対に日本の酒蔵に行くことに憧れているんですよ。」

足元の生産地を大切にしようと考え当初メニューに取り入れたのは、長与名産のみかんの生搾りジュースでした。しかし夏になりシーズンが終わると、みかんは入手できなくなります。そこで原液を作っておくことで長期間提供が可能になるレモネードに切り替えたのです。

「すっきり爽やかリフレッシュ」じゃなくて「あったかい場」を作りたい

窓の向こうに広がる穏やかな大村湾。このオーシャンフロントな立地がカフェ開店の決め手でした。

「初めは八百屋さんにレモンを注文していたんですが、直接生産者の方と繋がりたいと思いまして。そこで農家の知り合いに『誰かレモンを作っている人はいませんか?』って聞いて長与でレモンを生産している森果樹園の森さんを紹介してもらったんですよ。」

ながさきクラフトレモネードの原液は、森さんの果樹園で採れたレモンを新鮮なうちにスライスし、砂糖と一緒に煮詰めて作ります。果皮に含まれるレモンのあの香りと程よい苦味を引き出すには、火を止めるタイミングが大事なのだとか。

こうして作られたレモネード。江口さんはお店で提供するだけではなく、家庭でも楽しんでもらいたいと考え、瓶詰めの原液も販売することにしました。

「最初に原液を瓶詰めしたとき、『これを家にもって帰って、子どもに作ってあげてほしい』って思ったんですよ。自分が子どものとき、お母さんに作ってもらった甘い飲み物ってとっても美味しかったなぁと思って。」

現在はペットボトルの飲み物が一般的ですが、確かに一昔前までは、家で水を加えて作る原液タイプの飲み物をよく飲んでいたような気がします。

「今は家族で一緒にいても、それぞれが自分のスマホを触っていたりなんてこともあるじゃないですか。そんな時、同じ飲み物で乾杯したら、絶対子どもは嬉しいだろうなと思って。レモネードならお父さんは酎ハイ、お母さんはお湯を入れてホット、というようにそれぞれに合わせたアレンジも可能ですし。」

リラックスドリンクとしてのレモネード。なんだか新しい提案ですね。

人気に火がついたレモネード

ボーダレスラウンジではレモネード原液の他、様々な地域の特産品や農産物が販売されています。

しかし、レモネード原液を販売しても実際に売れるかどうかは未知数。そこで初めはまずSNS上で「欲しい人はDMください」と投稿し、様子を見ることにしたそうです。

すると、なんとあっというまに80本の注文が。「これはイケる!」と確信した江口さんが続けてクラウドファンディングを行なったところ、プロジェクト期間内で250%達成という成果を納めました。

「クラウドファンディングは、(資金調達ではなく)波及効果を狙って行いました。商品の知名度を県外まで押し出すツールとして利用したんです。」

作戦は大成功。満を持してレモネード原液の販売が開始され、瞬く間に人気商品になりました。

長く愛される本物と、それを楽しめる世界を作り続けることが目標

「主催しているナイトマーケットも5年目になります」と楽しそうに語る江口さん。

「まだまだ商品は生まれたばかり。これが多くの方の”定番”になれたらうれしいです。」

江口さんの次なる目標はながさきクラフトレモネードが本物志向の方の選択肢として長く愛され続けることだそうです。

「子ども支援やお祭りなど、レモネードを楽しむあたたかい日常の創出ももっと力をいれたいですね。」

想いを共にする仲間や行政と協力し、一杯のレモネードから街づくりにまで夢が広がる江口さん。事業をどこまでも楽しんでいる姿が印象的でした。

BOREDERLESS LOUNGE
〒851-2121 長崎県西彼杵郡長与町岡郷2244
TEL:0958-94-5321


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