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食べてほしいもの2026.05.22

お米といちごと犬と、体験まで届けたい|マルーンファーム 近藤勝馬さん、由佳さん


長崎・島原半島の入り口にある「マルーンファーム」。

ここでお米といちごを育てながら、“農業を体験する場所”をつくろうとしている夫婦がいます。

3年前、兵庫から長崎へ移住し、奥さんのご両親が営んできた農業を、ご夫婦で受け継ぐ形で新しい暮らしをスタート。現在は、ご主人が栽培を、奥さんが販売や発信を担当し、夫婦二人三脚で農園を営んでいます。

お二人が目指すのは、人と農業の距離がもっと近くなる場所。

今回は、そんなマルーンファームのお二人に、農業への思いとこれから描く未来について伺いました。

「このままじゃ、お米が食べられなくなる」

「夫が“農業を継ぐ”って言い出したんです」

最初のきっかけは、ご主人の決断でした。

けれど、近藤さん自身にも、農業を始める理由がありました。

「コロナの頃に両親と会った時、“年を取ったな”って思って。
今まで当たり前に食べていた実家のお米も、数年後には作る人がいなくなるかもしれない。この先も守っていきたい、って感じたんです」

“自分たちが食べるお米を、自分たちで作らなきゃいけない”。

そんな思いが、農業への背中を押しました。

農業を始めた年に、「誰も経験したことがない気候」が来た

マルーンファームが本格的にスタートしたのは3年前。

しかしその年、全国の農家が口を揃えて言ったそうです。

「こんな気候は初めてだ」

異常気象。
いちごの病気。
資材価格の高騰。

自然相手の仕事は、毎年“当たり前”が通用しなくなっています。

「今までの経験則が、今の気候に合わなくなってるんです」

特に長年農業を続けてきた農家ほど、「この時期にはこれをする」という固定観念が強い。
けれど近藤さん夫妻は、“今の環境に合わせて変えていく”ことを大切にしています。

「設備だけでは対応できない。
これからの農業は、今まで以上に 頭を使わないとやっていけないと思っています」

「美味しい」の先にある、“またここがいい”

マルーンファームの特徴は、リピーターの多さ。

「他のいちごも食べたけど、やっぱりここのがいい」

そんな声をもらえた時が、一番嬉しい瞬間だと言います。

ただ甘いだけではなく、“また食べたい”と思ってもらえる味。
そのために、栽培への妥協はありません。

「うちの名前を背負って、いちごたちが出ていくんです」

販売担当の奥さんは、味に対してとてもシビア。
少しでも納得できなければ、「これは販売できない」と、ご主人に率直に伝えることもあるそうです。


「喧嘩しながらやってます(笑)」

そう笑いながらも、そのやり取りからは、“本当に美味しいものだけを届けたい”という強い思いが伝わってきます。

いちごは、収穫まで1年半かかる

私たちが普段何気なく手に取るいちご。

けれど実は、苗づくりから収穫まで約1年半もの時間がかかっています。


「1年半かけて育てて、収穫できるのは半年。
だからこそ、生産者としてちゃんと美味しいものを作らなきゃいけないと思うんです」

マルーンファームでは、できるだけ循環型の農業にも取り組んでいます。

例えば、いちごの葉を肥料として活用したり、人工的な肥料を減らしたり。

「まだ“これが正解”って分かってるわけじゃないんです。
でも、できるだけ自然に循環する形にしたい」

試行錯誤を重ねながら、“これからの農業”を模索しています。

「お米といちごと犬と」

マルーンファームが掲げる3本柱。

それが、「お米」「いちご」、そして「犬」です。


今後は、ドッグランや体験型の農園づくりも構想しています。

「犬を連れて遊びに来て、いちごを食べたり、お米を買ったり。そんな“場所”を作りたいんです」

ただ、近藤さん夫妻が目指しているのは、一般的ないちご狩りのような“いいとこ取り”の体験だけではありません。

「収穫する楽しい部分だけじゃなくて、そこに至るまでの大変さや手間も、少しでも知ってもらえたらと思っていて」

例えば、田植えを一緒に手伝ったり。
お米づくりの工程を体験したり。

時間をかけて育てたものを、最後に実際に食べてもらう。


“作る”から“食べる”までを体験することで、農業の価値や食べ物のありがたさを、もっと身近に感じてもらいたいと考えています。

「体験して、最後に食べるところまでがセットなんです」

どれだけ手間がかかっているのか。
どれだけ自然と向き合っているのか。

実際に体験することで、食べ物への見方もきっと変わる。

マルーンファームが目指しているのは、そんな“農業との距離が近くなる場所”なのかもしれません。

自然の「感覚」を大切にする夫婦がつくる農園

インタビューの中で印象的だったのが、夫婦それぞれの子ども時代の話でした。

近藤さんは、小学校ではバレー、中学・高校ではバスケットボールに打ち込み、「家にいた記憶がないくらい、ずっと外にいた」と笑います。

一方、ご主人は部活動で剣道やゴルフをしていたそうですが、何より好きだったのは“釣り”。

「ずっと釣りしてましたね」

川や海で遊び回り、自然の中で過ごしてきた二人。

インタビュー中には、

「野生児夫婦ですね(笑)」

という言葉も飛び出しました。

そんな自然の中で育った感覚が、今の農業にもつながっているのかもしれません。
天候を読み、土や作物の変化を感じながら、自然と向き合う毎日。
効率だけではなく、“感覚”を大切にしているところにも、二人らしさが表れています。

そして今、そんな二人が目指しているのは、“人が自然に触れられる場所”をつくること。
田植えを手伝ったり、収穫を体験したり、犬と一緒に遊びに来たり。

ただ商品を買うだけではなく、自然の中で過ごす時間そのものを楽しめる農園を目指しています。

「島原半島の入り口だからこそ」

近藤さん夫妻は、地域の可能性についても語ってくれました。

「ここって、島原半島の入り口なんですよね」

小浜温泉方面から来る観光客が、ふらっと立ち寄れる場所にしたい。
若い人たちが、もっと生き生きできる地域にしたい。


そんな思いも、農園づくりの背景にあります。

「5年後、10年後には、“ここが観光名所です”って言えるようになりたいですね」

いつか、“長崎土産”になるいちごを

今後は、加工品づくりにも力を入れていく予定です。

いちごはどうしても廃棄が出てしまう農産物。
完熟しすぎたり、傷がついたりすると販売できなくなります。

だからこそ、

「いちごミルクのもととか、長崎土産になる商品を作りたい」

そんな未来も思い描いています。

空港のお土産売り場を見ながら、

「いつかここに、マルーンファームの商品が並んだらいいな」

そう語る姿が印象的でした。

農業の価値を、もっと知ってほしい

「農業って、思っている以上に手がかかってるんです」

資材価格の高騰も深刻です。
インタビューの日、大村空港で見た水の値段に驚いたという話も印象的でした。

「水が198円してて、“え、水よね?”って二度見しました」

肥料や資材、燃料費。
あらゆる価格上昇の影響を、農業は真正面から受けています。


「しんどい思いだけして、手元に残らなかったら続けられない」

それでも、価格だけでは測れない価値が農業にはある。

だからこそ、“どう作られているのか”を、もっと知ってほしいと近藤さんは話します。

最後に

農業は、決して楽な仕事ではありません。

天候に左右され、資材価格は上がり、手間をかけても利益が残らないこともある。

それでも近藤さん夫妻が農業を続けるのは、

「本当に美味しいものを届けたい」

その思いがあるから。


そしてもう一つ。

“作る人の顔が見える農業”を通して、食べる人との距離をもっと近づけたいからです。島原半島の入り口で始まった、マルーンファームの挑戦。
これからどんな景色をつくっていくのか、とても楽しみです。

Rezzedout

マルーンファーム

近藤勝馬さん、由佳さん

住所: 長崎県雲仙市吾妻町阿母名1684-3
   TEL:070-2435-5286
HP:https://maroonfarm.jp/
Instagram:@maroonfarm
オンラインショップ:https://maroonfarm.base.shop/

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