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食べてほしいもの2026.05.15

移住と食がつなぐ 、笑顔が集まるカフェ|海月食堂 新井明香さん、黒澤希望さん


長崎県東彼杵町。
山と海に囲まれたこの町に、地元の野菜をふんだんに使った料理で人気を集める食堂があります。

その名は 海月食堂。

倉庫をリノベーションした開放的な空間で、アレルギーを持つ人もそうでない人も同じテーブルを囲んで食事ができる。そんな場所として、多くの人に親しまれています。

この店を営んでいるのは、新井明香さんと黒澤希望さん。
横浜から東彼杵町へ移住してきた二人が出会い、ともに立ち上げた食堂です。

今回は、海月食堂が生まれた背景と、二人がこの町で描くこれからについて、移住のきっかけや食への思いとともに話を聞きました。

二人の出会いは「ロハスの郷」から

二人が出会ったのは、東彼杵町の山あいにある「ロハスの郷」でした。

自然に囲まれたこの場所は、オーガニックな暮らしや食を大切にする人たちが集まる拠点のような場所。地域の農産物を使った料理やイベントなどが行われ、町の人と移住者がゆるやかにつながる場にもなっています。

新井さんと黒澤さんは、ここで地元の野菜を使った弁当づくりを始めました。
オーガニック野菜を使ったお弁当を作り、販売したり、デリバリーで手づくりの食を届ける、そんな二人三脚の活動を続けていくなかで、次第にある想いが芽生えていったと言います。。

「お弁当を作って届けるだけだと、本当に必要としてくれる人にうまく届かない感じがしたんです」

自分たちから出向いて届けるのではなく、みんなが足を運べる場所をつくろう。そこが、訪れる人にとっての「いい居場所」や「拠点」になればーー。

そうした二人の温かい想いが重なり、人が集い、同じテーブルを囲むことができる「海月食堂」は誕生しました。


倉庫をみんなでリノベーション

お店の場所を探していたとき、役場の人から「空いている倉庫がある」と声をかけられます。


建物は、もともと麺やうどんを作って給食に届ける工場だった場所。
2階もありましたが、白アリの被害などがあったため思い切って撤去し、骨組みだけを残してリノベーションしました。

改装は仲間たちと一緒に進め、倉庫は少しずつ食堂の姿へと生まれ変わっていきます。

そして2017年8月、海月食堂がオープンしました。

子育ての経験から生まれた料理

海月食堂の料理の背景には、二人それぞれの子育ての経験があります。

新井さんは、横浜で看護の仕事をしながら四人の子どもを育てていました。
しかし三番目の子どもが難病を抱え、入退院を繰り返す生活に。

人工呼吸器を使うこともありました。

「人の看護をするより、まず自分の子どもの看護をしたい」

そう思い、自然の多い環境で子育てをしようと考えて地元へ戻ることを決めました。

一方、黒澤さんの子どもは重い食物アレルギーを抱えていました。
卵や乳製品、当時は小麦も食べることができなかったといいます。

それでも黒澤さんはこう考えていました。

「これは使えないけれど、でも美味しいごはんは食べられる。美味しいおやつだって作れるよ」


工夫しながら手作りの料理を続けてきたその経験が、今の海月食堂の料理につながっています。

二人が目指したのは、
「アレルギーの子も、そうでない人も、同じテーブルで笑って食べられるごはん」。
そんな食卓でした。

地元の野菜を使った人気メニュー

海月食堂の人気メニューのひとつが「タルチキンプレート」。

揚げるのではなく焼いたチキンにタルタルソースをかけ、6〜7種類の野菜のおかずとサラダが並ぶ一皿です。


もう一つの看板メニューが「ココナッツカレー」。
肉や卵、乳製品を使わないレシピで作られたスパイシーなカレーです。

野菜は、できるだけ地元のものを使用しています。
まずは近くの農家から仕入れ、足りないときは道の駅や周辺地域から調達します。

「なるべく近くで育てられた食材を使いたい」
そんな想いが、料理の基本になっています。

移住者にもやさしい町

東彼杵町には、この十年ほどで少しずつ新しい店が増えてきました。

カフェや雑貨店、洋服店など、大型施設ではなく小さなお店が点々と生まれています。

「移住者にやさしい町だと思います」
地元の人と移住者が分かれるのではなく、自然に混ざり合っている感覚があるといいます。

「頑張ってるね」「何かあったら言ってね」
そんな言葉をかけてくれる人たちが、この町には多いそうです。


二人が描く、次のかたち

子どもたちがまだ小さかった頃、海月食堂はまさに“わあわあ”とにぎやかな場所でした。

「海月食堂を始めた頃は、本当に子どもたちも小さくて。小学校から帰ってきたら店に来て、店やりながら子どもを育ててみたいな感じで、“わあわあ“しながらやってきた感がありますね」


そして今、海月食堂は少しずつ次の段階へと進み始めています。

「私たちは年齢も重ねて、体力も少しずつ変わっていくけれど、その代わり、今まで培ってきたノウハウや人とのつながりがあります。だからこれからは、自分たちだけで回すんじゃなくて、ずっと働いてくれているスタッフのみんなと一緒に回していく形にしていきたいと思っています」

お店という柱を大切にしながら、それぞれのやりたいことにも少しずつ挑戦していきたい。そんな想いもあるそうです。

また、お弁当づくりに力を入れてみたいという構想もあるといいます。

「ヴィーガンのお弁当でもいいし、季節のお弁当でもいい。いろんな種類のお弁当を時々作って、食べてもらえたらいいなと思っています」

新しいお茶を開発したり、今作っているどんぐりの商品も少しずつ増やしていきたい、と新井さん。


新井さんは、これまでの経験を生かした新しい取り組みも考えています。
横浜で産前産後の仕事に関わってきた経験があるからです。

「この町には、家事支援の仕組みがほとんどないんです。妊娠中のお母さんの家に行ってお手伝いをしたり、赤ちゃんがいる家庭で一緒にご飯を作ったり、そういうサポートがあればいいなと思っていて」

それは海月食堂と切り離されたものではなく、スタッフたちと一緒に広げていく活動になる予定です。
お店で働く時間もあれば、地域の家庭を訪ねて料理を作ったり、お母さんたちの暮らしを支えたりする時間もある。そんな新しい形を構想しています。

「これまでは“ここに来てください”という拠点型だったけれど、これからは私たちが外に出ていく。そんなフェーズに入ってきている気がします」

食堂という拠点を持ちながら、地域の暮らしに寄り添う活動へ。

海月食堂はこれからも、二人の想いとともに、この町で続いていきます。

Rezzedout

海月食堂

新井明香さん、黒澤希望さん

住所: 長崎県東彼杵郡東彼杵町瀬戸郷1102-2
   TEL:0957-56-8666
   営業時間:11:30~日没まで
   不定休
Instagram:@kurageshokudo
オンラインショップ:https://kurageshokud.theshop.jp/

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