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食べてほしいもの2026.03.20

震災を乗り越えてたどり着いた新たな拠点。「茶バター」と旬の果物を味わうクラフトジェラートの物語|「ちわたや」前野麻琴さん、高宏さん

長崎県大村市。豊かな自然と利便性が共存するこの街に、2025年7月、新しいお店がオープンしました。

大村を拠点に新天地でのスタートを切ったご夫婦が営むこのお店では、全国的な大ヒット商品となった「茶バター」や、地元大村の新鮮な果物をふんだんに使ったクラフトジェラートを提供しています。

熊本への移住、さらに東彼杵、そして大村へと移ってきたお二人の、これまでの歩みと商品に込める強いこだわり、そしてこれからの展望についてお話を伺いました。

幾多の試練を乗り越えて。関東、熊本から長崎への移住の歩み

お店を営むご夫婦は、もともと山形県と愛知県のご出身。最初は関東地方に住んでおられましたが、そこで東日本大震災を経験し被災したことをきっかけに、九州・熊本へと移住を決意されました。

熊本市内ではご主人はサラリーマンとして働いていましたが、思い切ってその職を辞し、南阿蘇の山奥へと拠点を移します。

そこで、奥様が以前から学んでいた「天然酵母のパン作り」を活かし、温浴施設内でのカフェスペースを引き継ぐ形で、個人規模のパン屋として事業をスタート。

しかし、2016年4月、熊本地震が発生します。

東日本大震災に続き、2度目の大きな被災でした。南阿蘇で営んでいたお店の建物自体が地震の被害に遭ってしまい、同じ場所で事業を続けることが困難になってしまったのです。

途方に暮れる中、県内外を問わず再起できる場所を探し回っていたお二人に転機が訪れます。知人から長崎県・東彼杵町の話を聞き、実際に足を運んでみると、そこは移住者が多く集まるエリアで、「よそ者の自分たちでも入りやすい」と感じる環境でした。

そして2017年4月、ゼロからの再スタートとして東彼杵でのパン屋開業へと漕ぎ着けたのです。

大ヒット商品「茶バター」の誕生と、大村への移転の決意

東彼杵に拠点を移し、パン屋を営む中で生まれたのが、現在のお店の看板商品とも言える「茶バター」です。

東彼杵町は、長崎県内でも有数のお茶の産地です。そこで「地元の特産品であるお茶を使ったパンに塗る商品はないか」と考え、開発されたのが「茶バター」でした。当初は茶農家さんの抹茶を使わせてもらうところから始まり、そこから様々な味わいのバリエーションへと派生していきました。

この「茶バター」が、全国的に紹介されるほどの大ヒット商品となります。注文が殺到し、パンの製造よりも「茶バター」の製造が忙しくなるという嬉しい悲鳴があがる一方で、新たな課題も生まれました。

当時の店舗は自宅兼用の小さな古民家だったため、製造スペースが非常に手狭であり、全国へ発送する食品としての衛生面での懸念も拭えませんでした。また、コロナ禍に入った頃にはパン屋としての店舗営業を閉め、「茶バター」の製造一本に絞らざるを得ない状況にまでなっていました。

「このままの狭いスペースでは厳しい」と危機感を感じたお二人は、5年以上の歳月をかけて新たな拠点を探し続けました。最終的に大村市に理想的な物件を見つけ、2025年2月に移転、同年7月に現在のお店をオープンするに至ったのです。

果物豊かな大村の恵みを活かした「クラフトジェラート」への挑戦

大村市への移転を機に、お二人は新たな挑戦を始めました。それが「ジェラート」の販売です。

東彼杵時代は自宅兼店舗だったため、繊細な温度管理や世話が必要な天然酵母のパン生地を扱うことができましたが、大村の新店舗には通うことになり、体力的な面からもパンの製造を続けることは困難でした。

しかし、「茶バターだけを売るのではなく、お客さんが気軽に立ち寄れるものを出したい」という思いから、以前から乳製品加工のつながりもあったジェラートに目を向けたのです。

ジェラート作りにおける最大のこだわりは、「添加物を使わないこと」と「地元のものを中心に使うこと」です。

これは、天然酵母のパンを作っていた頃から変わらない、「自分たちが安心して食べたいと思えるものを提供する」というブレない信念に基づいています。

特に大村市は果物が非常に豊富で、農産物に恵まれた土地です。みかん、梨、ぶどうなど、旬の果物を直売所で直接買い付けたり、知り合いの農家から仕入れたりしています。

「パンなどの焼き菓子とは違い、ジェラートは買ってきたフレッシュな果物をそのまま活かして作れるので、種類が増えてとても楽しい」と、お二人は笑顔で語ります。大村という土地の豊かさが、そのままジェラートの美味しさとバリエーションに直結しているのです。

お店の魅力を知っていただく、これからの目標

今後の目標について伺うと、「まずはこの場所でしっかりと継続していくこと」と力強く答えていただきました。

以前は日々の業務に追われ、イベント出店などのオファーに対しても受け身になりがちだったと言います。しかし大村に拠点を構えたいま、これからは自分たちからも積極的にアクションを起こし、より多くの人にお店の存在を知ってもらえるよう、一歩踏み出した活動をしていきたいと意気込みを語ってくれました。

揺るぎない「食」への想いが結実した場所。ぜひ足を運んでみて

東日本大震災と熊本地震という二度の大きな試練を乗り越え、九州の地でひたむきに「食」と向き合ってきたお二人。

東彼杵で生まれた「茶バター」の成功を経て、大村市という豊かな土壌で見つけた新たな表現の形が、フルーツたっぷりのクラフトジェラートです。「自分たちが食べたいと思える、安心できるものを」という揺るぎない想いが詰まった商品を味わいに、ぜひ大村市の店舗へ足を運んでみてはいかがでしょうか。

豊かな自然とご夫婦の温かな思いが、きっと心と体を満たしてくれるはずです。

Rezzedout

ちわたや

前野麻琴、高宏

住所:長崎県大村市西本町540番3-1階
   電話:0957-46-8806 日月休み
HP:https://chiwataya.stores.jp/
Instagram:@chiwataya


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