長崎を、めぐる。などなど

行ってほしいところ2022.08.21

数々の貴重なレコードが眠る音を受け継ぐ懐古の博物館|音浴博物館

 どこまでも続く緑深い山道。「この先に本当にあるのだろうか?」と不安になりながら、車を進める人もいるかもしれません。大瀬戸西海市の奥地に、ひっそりとあるのが「音浴博物館」です。

 レコードの所有数は、約16万枚。LP盤の登場で駆逐されて生産中止となったSPレコードや、いわゆるドーナツ盤と呼ばれるEPレコードなど、あらゆる種類のレコードがここにはあります。洋楽や邦楽、ジャズ、クラシックなど、ジャンルも多岐に渡ります。

 さらに録音機器の礎ともいえる、エジソンが発明した円筒状のロウ管式蓄音機や再生装置といった100年以上前の演奏機器も所有しているので、録音機器の歴史をたどることもできます。
 また、それらの技術が受け継がれて誕生した、昭和期のカセットレコーダーや映写機、ビデオデッキといった記録機器の展示も行われています。現在では考えられないようなユニークな形のものも多数あり、その当時の工業デザインや記録技術の変遷をたどることができます。
 まさにそれは音の博物館。これほどまでに貴重な音源や機器を所有する場所も珍しいでしょう。

 貴重な音源を聴くことができるのが音浴博物館の真骨頂。JBL、タンノイやビクターオーディオラなど名機と名高いスピーカーがあり、『音を浴びる』の名の通り、音が震わす空気を全身で浴びることができます。
 これらの貴重なコレクションの持ち主は初代館長の故・栗原榮一朗さんが、岡山から持ち込んだ10tトラック4台分の収集品から始まったもの。開館から5年後に亡くなった栗原氏の遺志を受け継いだ館長代理の髙島さんに、今回、話を聴くことができました。

 説明によると、元々、この建物は昭和32年、第二次世界大戦後の海外からの引揚者を救済するために整えられた小学校の分校でした。その後、ベトナム戦争の難民を一時的に受け入れる救援援護施設を経て、現在の博物館へと整備されたそう。

 戦争に翻弄され、人里離れた山奥に移住せざるを得なかった人々を迎え入れてきた建物。地元の人たちにも忘れられかけていた建物を一目で栗原さんは気に入ったそうです。そこは激動の昭和期を経て受け継がれてきた”音の遺産たち"の終着点にふさわしい場所でした。

 平成28年3月には西海市崎戸島にゆかりのあった元九州大学名誉教授故・中楯興氏のクラシックレコードのコレクションが新たに追加されました。

 「中楯氏は大正生まれ。第二次世界大戦中、学徒出陣で召集され、友人たちを亡くした戦時中の思いから、自由に音楽を聴ける喜びとして多くのコレクションにつながった気持ちが偲ばれます」と髙島さん。ここに眠る遺物、一つ一つに物語があることを教えてくれました。

※本記事の情報は、2018年取材時のものため、変更がある場合がございます。

音浴博物館
長崎県西海市大瀬戸町雪浦河通郷342-80
TEL:0959-37-0222
営業時間:10:00~17:00
定休日:木曜日

関連特産品

おすすめ記事